髙森美由紀さんの新刊『羊毛フェルトの比重』をレビューしてみた

 
困っている人
髙森美由紀さんの新刊『羊毛フェルトの比重』っていう本を読んでみたいんだけどどんな本なのかな。
 
フェルトママ
羊毛フェルトがモチーフになっている本は珍しいわよね。私が読んでみたから紹介するわね。
 

羊毛フェルトについてあれこれ調べているとき、『羊毛フェルトの比重』という本が出版されたことを知りました。

新しい本なので口コミはまだありませんでしたが、作者である髙森美由紀さんの他のどの作品も見ても評価がよく、根強いファンの方もいるようなので手にとってみることにしました。

著:髙森 美由紀, イラスト:海島千本

✓ この記事では、髙森美由紀さんの新刊『羊毛フェルトの比重』のあらすじ、作者プロフィール、感想レビューが分かります。

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『羊毛フェルトの比重』あらすじ

『羊毛フェルトの比重』のあらすじは以下のとおりです。

手芸店・八戸クラフトに努めて10年の紬は、いろんなことに捲んでいた。仕事、恋愛、人間関係…気にし始めたらキリがないから、すべてに慣れることにした。すべてにフタをしながら生きていけばいいのだ。

でも、手芸台につけられたタバコの焦げ跡を目にしたとき…

今、私が心を向けるべきは、どこだ? 30歳・紬の「自分を取り戻す」物語。

PR TIMES 幸せの意味も、人生の意味も、決めるのは自分だーー。髙森美由紀最新作『羊毛フェルトの比重』4/13発売!より引用

あらすじを見てみると、どこにでもいる30歳の女性のリアルな現実や悩みが描かれているようですね。

物語の中で、どのように羊毛フェルトが絡んでくるのかもとても楽しみになりました。

『羊毛フェルトの比重』作者の髙森美由紀さんのプロフィール

まず『羊毛フェルトの比重』作者の髙森美由紀さんのプロフィールを見てみましょう。

青森県出身。地元で勤務しながら創作活動を続ける。

2014年『ジャパン・ディグニティ』で第1回暮らしの小説大賞受賞

2017年『花木荘のひとびと』で第84回ノベル大賞受賞

主な作品に『おひさまジャム果風堂』『お手がみください』『みさと町立図書館分館』『みとりし』『ペットシッターちいさなあしあと』(すべて産業編集センター刊)

『柊先生の小さなキッチン』(集英社オレンジ文庫)

『山の上のランチタイム』『山のふもとのブレイクタイム』(中央公論新社)

『羊毛フェルトの比重』巻末より引用

ほのぼのとした世界が描かれていそうなタイトルばかりですね。

作者の髙森美由紀さんはきっと温かい方なんだろうなと想像しました。

『羊毛フェルトの比重』を読んだ感想レビュー

『羊毛フェルトの比重』の本

実際に『羊毛フェルトの比重』を読んでみました。

353ページに渡る物語でしたが、30歳の紬のリアルな世界観に引き込まれて、あっという間に読み切ってしまいました。

登場人物それぞれの問題に感じたリアルな感情

『羊毛フェルトの比重』には様々な人物が登場します。

手芸店に10年勤める30歳の紬。

職場の人間関係やルーズな彼氏に嫌気がさしつつも、何とか自分なりの落としどころを見つけてやり過ごしています。

何か違うな、このままではいけないなと思いつつも毎日が過ぎていく様子は、30歳のころの私自身の姿そのものでした。

そして紬が出会う少年父子。

両親の離婚による少年の張り裂けそうな感情や、親を困らせないようにと年齢以上の物わかりの良さは、主人公の紬が幼少時に持っていた抑圧された感情と重なっていきます。

少年が羊毛フェルトに興味を持ったことから紬との関係が築かれていき、いつしかお互いの存在が大きなものになっていたようでした。

私自身も離婚を経験しているため、少年の気持ちや親の気持ちが痛いほど分かり、涙なしでは読めない設定でした。

他にも、紬と少年父子行きつけの喫茶店の店主親子、お金や時間にルーズな紬の彼氏、ぶっきらぼうな紬の母、心の支えとなる紬の弟夫婦、理不尽な職場の同僚、喫茶店の老猫や迷い犬など、紬を取り巻く登場人物がたくさん出てきます。

物語における情景が細かくリアルに描写されており、まるで自分がその世界の一員であると錯覚させられるほど引き込まれていきました。

登場人物それぞれの問題への向き合い方に感動

登場人物はそれぞれに問題を抱えています。

私が特に感動したのは少年父子でした。

離婚して間もない父親が、少年を尊重しながら2人でたくましく生きていこうとする姿には心から感動しました。

紬から羊毛フェルトを教わる少年と、その父子から様々なことを感じる紬。

何気ないやりとりを通して、紬と少年親子がお互いに成長していく様子を感じられます。

また、紬自身の煮え切らない日々の問題にも展開が起こりました。

趣味の羊毛フェルトを彼氏にバカにされながらも、何となく許してしまい、関係はだらだらと続いていきます。

そんな中、彼氏が起こしたボヤ騒ぎから紬が選んだ未来と羊毛フェルトにかける情熱。

自分からはなかなか動き出せない女の子が、背中を押されることによって新しい一歩を踏み出す様子は読んでいて痛快で、とても勇気をもらえました。

羊毛フェルトという趣味が主人公の支えになっていたことに共感

この作品には羊毛フェルトが要所要所に登場します。

羊毛フェルトが趣味の紬は、羊毛フェルトを刺している時間は気持ちがクリアになって落ち着いていきます。

作業する机は自分だけの特別な場所となり、日々のモヤモヤを洗い流すかのように羊毛フェルトに没頭。

紬と同様に、私自身も羊毛フェルトを刺すときは自分だけのご褒美の時間となっており、机に向かう際のウキウキした様子、手元に集中して時間の経過を忘れる様子はまさに私と同じだなと思いました。

この作品を読みながら、趣味は何であれ、人生を豊かにしたり支えたりしてくれるものだなと感じました。

嫌なことがあっても、「帰って○○をしよう!」と思えば気分は高まるし、没頭する時間は日々の喧騒を忘れさせてくれます。

また、趣味を持つことで、話題が広がったり、人間関係の潤滑油となってくれることもあります。

私はこれからも羊毛フェルトを続けようと思ったし、羊毛フェルトを通してもっと人生を豊かにしていきたいなと紬を見て感じました。

作品を通して感じたこれからの自分のあるべき姿

『羊毛フェルトの比重』を一気に読んで感じたことは、人は一人で生きていけないんだなということ。

自分自身が選ぶものや出会う人によって人生が豊かになったりそうでなくなったり。

主人公の紬の周りには理不尽な同僚やルーズな彼氏がいて、くすぶりながらも趣味の羊毛フェルトを支えにして日々を送っている。

そんな中、出会った少年父子や、紬の味方になってくれる弟の奥さん、行きつけの喫茶店の店主親子、紬の羊毛フェルトを喜んでくれるお客さんとの関係にシフトチェンジしていくことで、紬の人生は好転していくのでした。

私自身も妥協したり諦めたり、現実から目をそらすことでやり過ごしてきたことが多々ありますが、紬の行動や、取り巻く人々の変化を作品から読み取ることで、これからの一つ一つを大切に選んでいこうと思いました。

『羊毛フェルトの比重』は人生がくすぶっている人におすすめ!

髙森美由紀さんの『羊毛フェルトの比重』は、情景や心理描写が美しく繊細なため、あっという間にその世界観に引き込まれていきました。

そして自然と涙があふれるシーンがたくさんあります。

切なくて胸がきゅっと締まったり、人々の言動に心がとても温かくなったり、物語が進むにつれて様々な感情を感じさせてくれました。

私自身も羊毛フェルトが趣味なので、主人公の紬と羊毛フェルトとの関係性がすっと入ってきました。

『羊毛フェルトの比重』は人生において何が大切かを深く考えさせてくれる本です。

人生がうまくいかない、くすぶっているけど一歩踏み出せないという方はぜひ一度読んで頂きたいですね。

羊毛フェルトが趣味の人もそうでない人もどちらにもおすすめの一冊です。

著:髙森 美由紀, イラスト:海島千本

最後までお読みいただきありがとうございました。